エヴァンゲリオンが大流行した96年から98年頃は、街角に公衆電話ボックスがあるのが当たり前の時代だった。
その頃のアニメの特典の王様と言えばテレホンカードで、劇場版の前売り券の特典についてくる数量限定のレイとアスカのテレカにはとてつもない人気が出て、かなりのプレミア価格が付いていた。10万円だったか100万円だったかは忘れたけれど、とにかくテレカとは思えないくらいの高値だった。
その後、2001年か2年頃の夏の時分に、大阪のまんだらけにふと立ち寄ったことがあって、中に入り、特に宛てもなく色々と商品を見て回っていた。そこで思いもかけない出会いをした。ガラスケースの前に立つと、そこには、皆が劇場版公開当時に喉から手が出るほど欲しがっていたあのアスカの黄色いワンピースのテレホンカードが飾られていたのだ。
しかし、テレカの値札を見て「ああやっぱりな」と思った。かつてのプレミア価格よりも0が一つ減っていた。100万が10万になったのか、10万が1万になったのか、それとも100万が1万になったのかは忘れたけれど、0が一つか二つ足りなくなっているのは事実だった。
その頃には既にエヴァの熱は醒めていた。あの劇場版完結編から既に数年経っていたし、エヴァはもう完結してしまって続編も出来ないから、他のファンも醒めていったのではないかと思っていたが、アスカのテレカの値札を見て、僕はようやく自分の中でエヴァの流行が終わったと実感することが出来た。そしてなぜか、安堵感を覚えた。自分の予想が当たっていたことに対する安堵感だろうか、それとも自分だけでなく、他のファンもエヴァに醒めていった事を、テレカの値段で客観的に確認することができたことに対する安堵感だろうか。あの熱狂をなかったことにしたかったのだろうか。
いつ頃からだろう、携帯電話が普及し、街角から公衆ボックスが次々と消えていった。特典もテレカから図書カードへと衣替えした。2007年の今、再びエヴァが熱い。新劇場版公開もさることながら、若い10代の世代や、CR新世紀エヴァンゲリオンなどのパチスロからエヴァに嵌った人たちが、新しいファン層を形成している。またエヴァで熱くなるとは、夢にも思っていなかった。
新劇場版の第三弾前売り券特典は、貞本義行の描いた綾波レイのマウスパッドだ。イラストをネットで見たとき、97年当時のあの頃にアスカやレイの限定テレカを見たときの興奮が甦ってきた。
またあの頃のように、プレミアがつくだろうか。