第26話 まごころを君に

劇場版公開終了後も、エヴァブームは続く

 当時はエヴァに救いを求めていた面もあります。他に面白いことがなかったので、エヴァが全てだったみたいな感じでした。

 劇場版終了後に「僕を救ってくれなかったエヴァへ」という本が出された記憶があります。読んだことはないのですが、このタイトル自体が、エヴァに嵌った人や、劇場版を見た人たちの気持ちをうまく表現しているかなーとも思えます。

 でもなんか自分の中で一歩前進できたような気がします。特に当時はインターネットがなかったので、孤立すると情報が一方的なものに限られて、シンジ君みたいに他人が自分を嫌っているから自分は駄目な人間なんだという悪循環な思考に陥りやすいのも事実で、そういう時代だったからこそ、孤立しがちなキャラクターに光を当てたエヴァは貴重だったんだと思います。今はインターネットがあるし、その中でも書き込みの自由度の高い2ちゃんねるやmixiがあるので、仮想空間とはいえ孤独が和らげられていますからね。

 でもこの劇場版では、テレビ版の最終話と違って、かなり絶望的な定義の中で、他人と関わっていこうとするシンジが描かれています。最後にはアスカに「気持ち悪い」と言われてしまいますが、このセリフは、庵野監督自身がエヴァを熱心に作って自分自身の心の内をさらけだしたことに対する自分自身への嫌悪感と自嘲からなのか、それともエヴァに熱を入れて劇場版に見に来ている観客に投げかけられたものなのか、作り手側も含め、95−97年当時のエヴァ現象に巻き込まれて熱を上げた人たち全員に対するメッセージなのか、色々な見方ができますが、少なくとも07年9月から公開される新劇場版ヱヴァンゲリヲンでは、このようなバッドエンドにはならないでしょう。庵野監督自身も希望的な終わり方をすると言明してますし。インターネットがなく、人々の孤独がより強かった97年当時ならあのラストでも、逆に事実を事実として受け止め、現実を大勢の人たちと共有しながら再確認することが救いとなったかもしれませんが、同じ手を二度使うわけにはいかないでしょうし、インターネットの登場で、当時に比べて孤独の感覚が若干変わってきたような気もするので、ただただどうしようもない現実をどうしようもない現実のままで終わらせる事が出来るのか。新劇場版では、この辺りのところをどう料理するのかが見所です。

 アスカの最後の「気持ち悪い」は、最終話でキャラクター全員がシンジのことを「嫌いだよ」と口々に言って、ほら、やっぱりみんな僕のことを嫌ってるんだ、と安心する時の、あの安心感とも似てる終わり方でした。

 庵野監督自身は、こんなアニメに熱中してないで、現実に帰りなさい、というメッセージを実写のパートで込めた、というようなことを何かで読んだ記憶があるのですが、この発言を果たして掛け値無しで受け取ってもいいものなのかどうか。他に何が裏があるのではないか、何か真意を隠したがっているのではないかと、色々勘ぐったりもしたのですが、エヴァブームを終わらせたかった庵野監督の意図に反し、ブームはこの完結編の映画の後もしばらく続きます。

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出演:緒方恵美、三石琴乃、林原めぐみ、宮村優子
監督:庵野秀明
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言語:日本語
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時間:163 分

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劇場版最後の実写で、庵野監督は観客に対して、現実に帰れというメッセージを込めた。このためエヴァブームが終息したともいわれているが、実際にはmixiのコミュニティ内に万単位の登録者数が存在したり、2ちゃんねるに専用板が出来るなど、その人気は衰えることを知らない。また昨今ではパチスロからエヴァに嵌った人や、エヴァを見た10代の間でも新しいファン層が形成されている。かつてリアルタイムでエヴァに嵌った親から、その子へとブームは受け継がれるのだろうか。

07年度公開の新劇場版ヱヴァンゲリヲンでは、かつては視聴者側だった人たちが、今度はクリエイターとして制作に携わっている。どのような映画に仕上がるのか非常に興味深い所だ。

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『エヴァとの思い出』

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